44歳で漫画家になりましたが…
漫画家になりたいと思ったことがある皆様、こんにちは。漫画家になる時には何か条件があるのでしょうか?
私はこの記事を書いている時点で47歳。漫画家になりたいと思ったのは42歳の時、プロの漫画家としてデビューしたのは44歳でした。大学は理系の学部卒で、美大や絵の学校に通ったことはありません。
デビューしたきっかけは、comicoさんと少年画報社の合同漫画コンテストに応募していちばん下の賞にひっかかり担当編集者さん付きになったことでした。
↓↓↓拙著『ケットウ!~糖尿病内科医・甘栗美咲~』全2巻(紙の本・電子書籍両方あり)
ここまで読んでくださったら「そうか!漫画家になりたかったら何歳でもなれるんだ」と思われるかもしれません。
私は商業漫画の単行本を2冊出しましたが、じつは自分ではどうにもならない理由(連載をしていたアプリがサービス終了、その他担当編集者さんの異動など会社の中の事情)が重なり、少年画報社さんから次の仕事がいただけない状況になってしまいました。
そこで、よその出版社には知り合いの編集者さんが誰もいない状態で漫画を描いて賞に応募し始めましたが、まだ結果が出ていないのです。
この記事では「漫画家になりたいけど、自分の年齢では無理なのか?」と気になっていらっしゃる方向けにいろいろ書いてみたいと思います。

なかなか大変ですね…

そうよ、何とかして次の仕事を探さなきゃいけないの。
若い人のほうが圧倒的に有利!!
「年齢に関係なく、良い作品を描けるなら漫画家になれるのではないか?」と思われるでしょう。
しかし残念ながら「漫画家になりたいなら若いほうが圧倒的に有利」と言わざるを得ません。
以前、少年画報社の担当編集者さんから「(どことは具体的に言えないけど)年齢で(漫画家志望者を)切るところはあります」と言われましたし、他の漫画家の先生達からも聞いています。
特に少年漫画や週刊誌ではその傾向が強いようです。確かに少年ジャンプあたりでアラフィフの新人がデビュー!!なんてめったにないですよね、この年齢でも漫画家になりたくて持ち込みしている方はたくさんいるはずなのに。
↓↓↓この前某少女漫画月刊誌のコンテストに応募して落ちた読切供養です、良かったらどうぞ!(無料)

少年漫画の場合、読者が少年なのでその感性がズレると良くないので25歳までにデビューしないとかなり難しいなどと言われますね。少女漫画も同様です。私の漫画は青年漫画に分類されています。
漫画賞や漫画家募集を見る限り「何歳まで」という制限はありませんけど、これは「何歳でも応募は出来ますが、年齢はまったく考慮しません」ということではないです、残念ながら。
「18歳の少し下手な人と22歳の上手い人が応募してきたら18歳のほうを選ぶ」というのも見かけました。たった4歳の差なのに!!18歳のほうが伸びしろがあるからでしょうか。
「いや、60代~でも漫画家デビューした人がいるじゃないか」と言われそうですが、そういうケースは珍しいから記事になったりします。中卒でも弁護士になった方はいらっしゃいますが、一般的にはかなりレアなのと同じです。
年齢のハンデをものともしない天才新人!!ばかりではないでしょう。少なくとも私はまったくそうではないので苦労しています。
年齢詐称している漫画家もいる!?
なんと、漫画家になるには若いほうが有利なので年齢を詐称している人もいるそうなのです。編集部も、戸籍抄本を取り寄せて確認するわけではないそうなのでバレずに嘘をついている人もいるのでしょうね。
じつはSNSでも漫画家志望の方が「自分は実際より若い年齢を書いて応募している。年齢で足切りされたらたまらないから。デビューしちゃえばこっちのもんだ」的なことを書いているのを見かけたことがありますが、その方は今のところまだデビューなさっていないようです。
私は「嘘はバレるし、正直にやっていればいずれ報われるはず」と信じて年齢も何もかも正直に記載しています。それで「47歳だからダメだ」と思われるなら仕方有りません、もっともそういう編集部に応募するのは無駄なので「どこがそうなのか」は知りたいですけど(笑)
年齢とか確定申告とか、そういう「正直にやって当たり前」のことをちゃんとしない人が許されてるなんてなんだかおかしいと思いますけど、天網恢恢疎にして漏らさずとも言いますし…
正直者はバカを見ないんです。ズルしてる人のが上手くいってる気がします。でもいずれそのズルはバレるんです。バレたら全てを失います。どんな時でも正直でいるんです。負けてもいいから正直でいるんです。いずれ正直が勝つ時はやってきます。忘れないのです。どんな時でも正直でいる様にするんです。
— ゆーすけ (@yusuke_shiozawa) January 1, 2024
自分で漫画を配信する方法もある!
出版社を通して漫画を描くスタイル(商業漫画家)だと若い人のほうが有利なので、年齢が高い場合は圧倒的な実力を持っていないと難しいです。
私が賞をもらったのは、たまたま運が良かったのだと思います…だから安易に「40歳以上でも簡単に漫画家になれますよ」なんて言えません。実際今、次の仕事をもらうために苦労していますしね。
もし「うちは年齢で足切りしません」という編集者の方いらっしゃいましたらこちらからお仕事依頼お待ちしております。月刊連載希望です!
さて。今は出版社を通さずに漫画を配信する方法もあります。KDPやナンバーナイン様経由で電子書籍を配信(KDPは一応紙の本も)することが可能です。
編集者さんから作品の内容についてあれこれ細かく言われなくていいので「とにかく好きに描きたい」という方にも良い方法じゃないかと思います。もちろん、年齢制限もないですし!!
KDPは印税率(売上のうち、自分の取り分の割合)が高いとはいえ、「基本的に宣伝は自分でやらなければいけない」「原稿料をいっさいもらえない」のが大きなネックとなります。
仮に原稿料が1ページあたり8千円として、20ページ描けば16万円。原稿料がもらえないというのは、それ以上に印税が入らないと厳しいですよね…電子書籍の印税で何十万、何百万も稼ぐのって相当ハードルが高いと思いますがいかがでしょうか?
どうしても漫画家になりたいならどうすべきか?
どんなことでも「100%無理」ということはありません。わずかでも可能性があるなら頑張るしか無いのですが、少しでも可能性を上げたいですよね。
・ジャンルを考える…少年漫画、少女漫画は読者が若いので、漫画家も若いことが望まれるそうです。可能ならそれ以外のジャンルを目指したほうが良さそうです。
・週刊誌より月刊誌…あの『ジョジョ』の荒木飛呂彦先生でさえ、途中から月刊連載に移行されました。理由はいろいろあるでしょうが、やはり週刊連載はとても体力を消耗するもの。
せっかく連載が始まっても、病気になったり過労死してしまったら目も当てられません。月刊連載のほうが「中年でも出来る」と思われて年齢のハードルはいくらか下がるのではないでしょうか。
・若者には描けない漫画を描く…18歳と48歳の漫画家志望者が同じ場所で争うなら、普通に考えたらどう考えても18歳のほうが有利に決まっています。
だから「若者には描けない、豊富な人生経験がないとなかなか描けないような漫画」を目指すのはどうでしょうか?
私が商業で連載していた『ケットウ!~糖尿病内科医・甘栗美咲~』は、自分自身の糖尿病患者としての10年間の体験を元に描きました。ちょっと取材した程度では糖尿病患者の心の機微やさまざまな問題は表面的にしかわからなかったと思います。
・年齢の高い新人が受賞している漫画賞を狙う…漫画雑誌は毎月「月例賞」というコンテストをしているところが多いと思いますが、受賞者の年齢に注目してみてください。
若い人ばかり受賞しているところは、残念ながら年齢で切られる可能性が高いので難しいかもしれません。自分と同じぐらいか、もっと年齢の高い人が受賞していたらチャンスです♪
最後に…漫画家になれたとしても
「担当さんが編集部内で嫌われてるから会議で連載企画が通らない」「担当が社内政治で負けて左遷されたので連載ポシャった」とかそういう作家関係ない理由での不採用ってなんとかならんもんかねと思う。
— 洋介犬(ヨウスケン) (@yohsuken) November 13, 2024
難関を突破して中年で無事に漫画家デビューできたとしても、その後ずっとコンスタントに仕事がもらえるわけではありません。時には↑↑↑のような理不尽なことも起こるものです。いろいろ思うことがあっても表で言えずに一人で悩んでいる漫画家はたくさんいるそうです。
また「次はこういう作品をやろうね」等言われていても、悲しいことに「口約束」は何の効力もなく「そんなこと言ったっけ?」になることが非常に多いと先輩方から聞いています。
だから会社員だった方が漫画家になる場合、安易に退職なさらないほうがいいかもしれません。ある日連載が終わって無収入になっても大丈夫かどうかよく考えなければね。
↑↑↑私が不定期に日記感覚で下描きもなしでザクザク描いてXに上げている猫漫画ですが、氷河期世代で今までさんざん苦労してきたのに、じゃあ会社員ではなく漫画家で頑張ろうと思っても結局苦労ばかりでなんなん!!と思ったりもします。
何かと厳しいことばかりですが、それでも頑張りたいと思う皆様、どうか諦めないで!私も頑張りますからっ!!
そのうちガラリと今の仕組みが変わって、誰もが出版社を通さずに好きに漫画を発表する流れが来るかもしれないですしね。

とても大変なことだけど、やりたいならやるしかないですね!

そうよ私も諦めないから!!